2025.5.21

データクリーンルーム(DCR)とマーケティングミックスモデリング(MMM)で実現する次世代メディアマーケティング ~プライバシー保護と予算最適化の両立~

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データクリーンルーム(DCR)とマーケティングミックスモデリング(MMM)で実現する次世代メディアマーケティング ~プライバシー保護と予算最適化の両立~

デジタルマーケティング市場においてはCookie規制の強化を皮切りに、従来型のデータ活用手法が大きな転換点を迎えています。

サードパーティCookieの利用制限により、これまで標準とされていたユーザートラッキングが精度を失いつつあります。その結果、広告効果の測定や顧客行動解析において、従来の手法では解決できない新たな課題が浮き彫りになってきました。
また、オンラインとオフラインのメディアが多様化・再評価される中で、各施策を統一的な指標で評価できないことは、マーケティングプランニングにおける大きな障壁となっています。

こうした状況に対し、セプテーニでは、プライバシー保護と精緻な顧客分析を両立する「データクリーンルーム(DCR)」と、全施策を統合的に評価し、効果的な予算配分を導き出す「マーケティングミックスモデリング(MMM)」を掛け合わせた、新たな解決策を実現しました。これら2つのアプローチは、分析および施策評価・戦略策定といった場面でそれぞれ独立して利用されてきている手法ですが、これらの特性をかけ合わせることで、より高度で新しい示唆を得ることにつながりました。

「データクリーンルーム(DCR)」は、プラットフォーマーが所有するユーザーデータを匿名化したうえで集約しながら、市場反応を詳細に把握することができる、プライバシーに配慮された分析環境です。

一方、「マーケティングミックスモデリング(MMM)」は、複数チャネルにおけるマーケティング施策のデータを統一された評価指標に変換し、各施策のROIを客観的に算出する手法です。
両者を連携することによって、マーケターはプライバシーに配慮しながら、多様なチャネルにまたがる施策を包括的に分析し、柔軟に戦略を設計することが可能となります。

本記事ではCookieフリー時代に求められる新たなマーケティングアプローチを概観するとともに、セプテーニが提供する統合ソリューションについて解説します。

データクリーンルーム(DCR)が実現する、プライバシー保護下でのデジタル広告効果測定

近年の個人情報保護の流れを受けて、サードパーティCookieがAppleで廃止された影響により、「リターゲティング広告」などを主軸とした従来のマーケティング手法の見直しが急務となっています。

また、スマートフォンやSNSの普及により顧客体験が多様化する中で、一人ひとりにパーソナライズされたマーケティング戦略が求められています。各顧客にとって効果的なマーケティング活動を実現するには、個人情報を活用したデータ分析が重要となります。しかしながら、そのためには、ユーザーからの明示的な許諾の取得と、データ活用の透明性の確保が不可欠です。

「効果的なマーケティング活動」と「プライバシーの保護」の両立が課題となる中、その解決策としてデータクリーンルーム(DCR)の活用が注目されています。

データクリーンルーム(DCR)の基本構造と特徴

データクリーンルーム(DCR)とは、各プラットフォーマーが提供する、安全性を確保しつつ各種データの統合分析が可能なクラウド環境を指します。
プラットフォーマーが提供するデータクリーンルーム(DCR)環境に、企業が所有するデータを接続し、プラットフォーマーが提供するデータと掛け合わせて分析する仕組みとなっています。

プラットフォーマーが保有する広告接触データや、企業が保有するコンバージョンデータを、個人が特定できない環境で統合することで、個人情報保護に配慮しながら異なる発生源のデータを包括的に分析することが可能となります。これにより、企業はユーザーの行動傾向や興味・関心データに基づいた継続的な改善サイクルを実現できるのです。

さらに、企業は分析から得られた示唆を活用して、マーケティング戦略の立案にとどまらず、割引クーポンやポイント還元といったユーザーにとって有益なサービスを提供しやすくなります。データクリーンルーム(DCR)は特にそのような価値還元型サービスとの親和性が高いと言える点が特徴です。

日本国内では主に、以下の3つのデータクリーンルーム(DCR)が存在しています。

  • 主要プラットフォーマーが保有する「プラットフォームデータクリーンルーム(DCR)」

  • 上記のうち、当社のような特定代理店向けに提供されている「代理店データクリーンルーム(DCR)」

  • 特定企業向けに提供または特定企業が保有する「プライベートデータクリーンルーム(DCR)」

データクリーンルーム(DCR)が統合マーケティングにおいてもたらす価値

データクリーンルーム(DCR)は、異なるデータソースから、顧客接点から成果創出までのデータを一元化して分析できるため、オンラインとオフラインを統合したフルファネルマーケティングの分析基盤として有効に機能します。

統合マーケティングへのデータクリーンルーム(DCR)の活用の一例として、オンライン広告のクリックデータと店舗での購買データを結びつけて統合的に分析することで、「どの広告が実際の購買行動につながったのか」を可視化することが可能です。

また、トップファネルからボトルファネルまでの詳細な効果測定や顧客行動の分析もできるため、顧客理解の深化にもつながるでしょう。

データクリーンルーム(DCR)を活用すると、個人情報保護の観点で安全に、かつ大規模なデータ資産を活用したより精度の高いマーケティングを展開できるのです。

ビッグデータ時代に注目を集めるマーケティングミックスモデリング(MMM)というアプローチ

データクリーンルーム(DCR)のほかに、マーケティング施策の効果を定量的に分析するアプローチの一つとして近年注目を集めているのが「マーケティングミックスモデリング(MMM)」です。

時系列データを活用して要因間の関係を表現するモデルを導出する点が特徴で、広告出稿データや実購買データ、デジタル行動指標などの多様なデータに加え、天候や経済指標などの外部要因も考慮したうえで分析することで、より正確な施策効果を測定することができます。

このアプローチは、さまざまなマーケティング施策が売上や成果に与える影響を推定し、統計処理を通じて、マーケターが市場の環境や構造を包括的に理解することを支援するものです。特にビッグデータ時代におけるマーケティング投資の最適化に貢献します。

このように、マーケティングミックスモデリング(MMM)は、マーケティング施策の効果をチャネル横断型で科学的に評価し、戦略的な意思決定を支援するための強力なアプローチです。

マーケティングミックスモデリング(MMM)と因果推論を組み合わせたセプテーニ独自のソリューション「XYhai(サイハイ)」

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マーケティングミックスモデリング(MMM)と因果推論を組み合わせ、セプテーニが独自に開発したソリューションが「XYhai(サイハイ)」です。プライバシー規制やメディアの多様化により、マーケティング施策の効果を統一的に評価することが難しくなっているという課題を解決し、マーケティングにおける意思決定を横断的に支援します。

データクリーンルーム(DCR)が個別施策の評価検証(深堀り)に適しているのに対して、XYhaiは統計的アプローチを用いて、戦略全体を評価検証(俯瞰)することを可能にするソリューションです。

XYhaiでは「マーケティングミックスモデリング(MMM)」の理論的アプローチでマーケティング施策の影響度を構造的に示し、「実証テスト」の実践的アプローチで市場のリアクションを検証します。このようにマーケティング施策の因果関係を明らかにすることで、統合マーケティングの最適化を実現します。

 

以下はそれぞれのアプローチの特徴です。

 

1.データ資産から構造を読み解く理論的アプローチ「マーケティングミックスモデリング(MMM)」

  • 全ての蓄積データを適切に分析&モデル化し、過去の動きを正しく理解する

  • データ科学的な裏付けを基準に、現在のマーケティング活動を最適化する余地を示す

 

2.市場のリアクションを検証する実践的アプローチ「実証テスト」

  • 市場ニーズ(生活者インサイト等)は全て市場数値に反映されるわけではない

  • 市場ニーズを捉える仮説を実証施策としてデザイン&実行し、市場の反応を適切に分析することで市場ニーズを顕在化させる

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また、2024年12月には、グーグル合同会社との共同研究のもと、DML※を用いた先進的な因果推論手法が導入され、より精緻な効果計測を行えるようになりました。
※ DML(Double/Debiased Machine Learning):機械学習手法を用いつつ2段階に分けて処置効果を推定する手法。1段階目で2つの予測タスクを行い、2段階目で処置効果を推定するモデルを作成する。
https://www.septeni-holdings.co.jp/news/release/2024/12013886.html

 

このスキームにより、TVCMやSNS広告、検索連動型広告などの施策による効果を、メディア横断で分析し、広告接触からコンバージョンまでのユーザー行動実態に即した効果を可視化できます。

加えて、XYhaiでは出稿状況や市場状況に応じた最適な施策提案と効果予測を行えるのも特徴です。特定の地域や限られた範囲で検証を行うエリアテストを組み込んだ評価によって、より優良な実験データの収集と分析を継続的に行い、次の施策に反映しやすい実用的なアウトプットを提供しています。

データクリーンルーム(DCR)とXYhaiの統合による新たな可能性

「マーケティングミックスモデリング(MMM)」と「データクリーンルーム(DCR)」のアプローチは、実際の活用シーンにおいては独立して活用されることが一般的となっていました。セプテーニでは、それらのソリューションを掛け合わせて利用することで、これまで以上に統合的なマーケティング効果測定を実現しています。

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上図は、それぞれの棲み分け方を表現したイメージ図です。MMMによる戦略全体を俯瞰した評価検証(平面的評価)と、DCRによる個別施策を深掘った評価検証(立体的評価)を適切に組み合わせることで、全体と個別の施策両方を総合的に分析することができます。

 

このように、各メディアの投資対効果(ROI)や重要業績評価指標(KPI)に基づく最適な予算配分を提案し、データに基づく継続的な改善サイクルを確立することで、より効果的なマーケティング活動の実現を目指しています。

セプテーニが提供する包括的なデータマーケティング支援

セプテーニは、企業のデータマーケティング戦略を根幹から支えるため、データ活用基盤の構築から運用までを一貫してサポートする体制を整えています。

画像3 (3)-1以下3つがセプテーニが提供する支援の特長です。

 

  1. データ活用基盤の構築:プライバシーに十分配慮したデータ基盤の設計・構築により、高信頼性のデータ環境を実現
  2. データドリブンなプランニング:統計的手法とAI技術を融合した高度な効果測定により、計測環境に依存せず、各施策のROI向上を的確に支援
  3. 実践的支援:業界特性に即した実践的アプローチで、段階的な導入プロセスと綿密な効果検証を実施。これにより、企業は市場変動に柔軟かつ迅速に対応できる体制を構築し、持続可能な改善サイクルを確立

プライバシー保護時代におけるデータドリブンマーケティングの実現に向けて

「効果的なマーケティング活動」と「プライバシーの保護」の両立が不可欠な現代において、精度の高い効果測定と持続可能なデータ活用モデルの構築が鍵を握ります。

セプテーニは、データ基盤の構築から活用に至る全プロセスを一気通貫で支援し、プライバシーに配慮した最適なデータ活用を実現することで、効果的なマーケティング活動を推進します。
「効果的なマーケティング活動」と「プライバシーの保護」の両立に課題を感じていらっしゃる場合は、ぜひセプテーニへご相談ください。

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執筆者

 

Septeni Japan株式会社
ソリューションテクノロジー領域データソリューション部

「Septeni FOCUS」は、Septeni Japan株式会社が運営するマーケティング担当者のためのメディアです。