Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)とは?使い方や注意点を紹介
- AI

Septeni FOCUS 編集部

Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)は、テキストによるプロンプト指示で高品質な画像を生成できるAIツールです。
オープンソースのため無料で利用できるのが特徴で、ビジネス分野でも広く活用されています。
この記事では、Stable Diffusionの基本的な仕組みや主要モデルの違い、使い方や料金プラン、商用利用時の注意点などについて、分かりやすく解説します。
※こちらの記事は2025年7月23日時点の情報です。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)とは
まずは、Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)の概要と特徴について解説します。
オープンソースの画像生成AIモデル
Stable Diffusionは、入力されたテキスト(ロンプト)をもとに、高品質な画像を生成するAIモデルです。
イギリスのAIスタートアップ企業、Stability AI社が開発し、2022年にオープンソースとして公開されました。
これにより、誰でも自由にモデルを導入・カスタマイズできる環境が整い、世界中のクリエイターや開発者から注目を集めています。
商用利用も可能
Stable Diffusionで生成された画像は、基本的に商用利用が可能です。
Webデザインや広告、商品パッケージ、出版物など、幅広い用途で活用できるため、個人クリエイターだけでなく企業のコンテンツ制作にも導入が進んでいます。
ただし、Stability AI社のライセンス利用規約により、年間収益が100万ドルを超える企業が商用目的で利用する場合、有料ライセンスの取得が必要となるため、利用前に規約を確認しておくことが大切です。
画像の編集や変換にも対応
Stable Diffusionには、プロンプトによる画像生成だけでなく、既存の画像を加工・編集できる機能も搭載されています。
代表的なものは以下の通りです。
名称 | 機能 |
img2img | 既存の画像を元に、異なるスタイルや構図の画像に変換する機能 |
inpaint | 画像の一部を塗り直す・不要な要素の除去など部分的に修正する機能 |
outpainting | 画像の枠外を拡張し、より広い構図を創造する機能 |
既存画像のタッチ変更や不要部分の修正、部分的な画像加工なども可能です。
ローカル環境(オンプレミス)で運用可能
Stable Diffusionは、クラウド上のWebアプリだけでなく、PCやサーバーなどのローカル環境にインストールして使用できます。
個人情報や機密データを外部に送信せずに画像を生成できるため、セキュリティを重視する企業やクリエイターにとって大きなメリットと言えるでしょう。
また、カスタムモデルの導入や拡張機能の追加など、自分好みに環境を整えられるのもローカル運用の魅力です。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)とほかの画像生成AIとの違い
画像生成AIとしては、Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)のほかにも、Midjourney(ミッドジャーニー)やDall-E 3(ダリ・スリー)などが有名です。
Midjourneyは、Discord上で操作するユニークなUIを持ち、幻想的でアート性の高いビジュアル表現に優れています。
写実的な風景や抽象的な構図も得意で、アーティストやデザイナーから支持を得ている生成AIです。
Dall-E 3はOpenAIが開発したモデルで、ChatGPTと連携して簡単に使えるのが特徴です。
自然な日本語を含むテキスト入力に対しても非常に高い精度で反応し、意図通りの画像を生成しやすいでしょう。
対して、Stable Diffusionは、「オープンソース」「ローカル利用可」「無料で使える」という特徴があります。
生成された画像の所有権がユーザーに帰属する自由度の高さや、モデルのカスタマイズや追加学習の柔軟性が大きなメリットです。
関連記事:Midjourney(ミッドジャーニー)でAI画像生成!料金や使い方、プロンプトを紹介
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)の仕組みとは?
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)は、以下の3つの主要コンポーネントが連携することで、画像を生成できる仕組みになっています。
- Text Encoder(テキストエンコーダー)
- VAE(Variational Autoencoder)
- 拡散モデル(Diffusion Model)
これらはそれぞれ独立して機能するのではなく、互いに情報をやり取りしながら画像生成を進めていきます。
ここでは、それぞれの役割と、Stable Diffusionがどのようにして高精度な画像を生み出しているのかを分かりやすく解説します。
Text Encoderの役割
最初のステップでは、ユーザーが入力したプロンプトが、Text Encoder(テキストエンコーダー)によってAIが理解できる形式に変換されます。
Stable Diffusionでは、OpenAIが開発したCLIP(Contrastive Language–Image Pretraining)モデルがText Encoderとして使用されています。CLIPは、文章と画像の意味を同じ空間上で比較できるように学習されたAIモデルで、プロンプトの意味を視覚的に理解する力に優れています。
CLIPによって抽出された情報は、後の画像生成工程における「設計図」となり、プロンプトに忠実なビジュアルを生成するための重要な土台となります。
VAEの仕組み
画像生成AIでは、数百万のピクセル情報を扱う必要があるため、計算負荷が非常に高くなります。
ここで活躍するのがVAE(Variational Autoencoder)です。VAEは、「エンコーダー」と「デコーダー」の2つの構造から成り立っており、画像のデータを一度圧縮して潜在空間(latent space)に変換し、そこから再び解凍して画像として出力する仕組みです。
Stable Diffusionでも、画像をそのまま生成するのではなく、まずは潜在空間で処理を行います。
生成された潜在画像は、直接目に見える形ではありませんが、最終的にVAEのデコーダーがそれを高解像度の画像へと復元してくれます。
この工程により、より効率的かつ高速に画像生成が可能になり、一般のパソコンでも運用できる軽量性を実現しているのです。
拡散モデルの学習
Stable Diffusionの核となる技術が拡散モデル(Diffusion Model)です。
画像にノイズを加えたり取り除いたりしながら、段階的に意味のある画像を復元していくというプロセスが踏まれます。
生成プロセスでは、まず「真っ白なノイズ画像」からスタートし、プロンプトで与えられた意味情報を少しずつ反映させながら、何十回にも分けて段階的にノイズを除去していきます。
ノイズ除去のステップを何十回も繰り返すことで、徐々にイメージが明瞭になり、プロンプトに合った画像が浮かび上がってくるのです。
このプロセスでは、「U-Net」と呼ばれるニューラルネットワークが活躍します。
U-Netは、画像内の特徴を細かく分析し、どの部分のノイズをどの程度取り除くかを判断します。
そして、CLIPによって抽出されたテキストの意味情報と照らし合わせながら、画像の輪郭や色、構成を次第に明確にしていくのです。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)のモデルとは?
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)には、公式に提供されているベースモデルと、ユーザーやコミュニティによって特定のスタイルや用途に合わせてファインチューニングされた派生モデルが存在します。
ベースモデルは、汎用的な画像生成に対応できるように設計されており、用途や表現力のレベルに応じて選べるよう複数のバージョンが用意されています。
一方、ファインチューニングモデルは、イラストやリアル人物、アニメスタイルなど、特定の用途に特化しているのが特徴です。
それぞれのモデルの特徴は、以下の通りです。
【公式ベースモデル】
モデル名 |
リリース時期 |
特徴 |
Stable Diffusion 1.5 |
2022年10月 |
初心者向けでアニメ調やイラスト生成に適している。 |
Stable Diffusion 2.1 |
2022年12月 |
高解像度に対応したモデル。 複雑なプロンプトの解釈が可能。 |
Stable Diffusion XL |
2023年7月 |
高解像度で複雑な構図やリアルな表現に強い。 |
SDXL Turbo |
2023年11月 |
生成時間を大幅に短縮した軽量モデル。 |
Stable Diffusion 3.0 |
2024年2月 |
画像内の文字再現精度がアップ。 マルチモーダル対応。 |
Stable Diffusion 3.5 |
2024年10月 |
高品質な画像生成とプロンプトの解釈精度が向上したSD 3.0の改良版。 |
最新モデルほど高品質な画像を生成できますが、その分GPU性能やメモリ容量など、要求されるハードウェアスペックも上がります。
PC環境や目的(イラスト制作、商用デザイン、ブログ画像など)に合わせて適切なモデルを選びましょう。
【ファインチューニングモデル】
モデル名 |
ベースモデル |
特徴 |
Beautiful Realistic Asians(BRA) |
SD 1.5 |
アジア系のリアルな人物表現に特化。 自然な肌の質感や髪型を再現できる。 |
Japanese Style Realistic |
SD 1.5 |
日本人らしい顔立ちを再現できる。 |
CityEdgeMix |
SD 1.5 |
アジア系女性を中心とした生成モデル。 制服やユニフォームを着用した女性が得意。 |
HimawariMix |
SD 1.5 |
アニメ系のモデルで、フラットなデザインが得意。 |
生成したい画像の雰囲気や用途に応じて、ベースモデルとファインチューニングモデルを組み合わせることで、Stable Diffusionの表現力を最大限に引き出すことができます。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)の使い方
続いては、Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)の具体的な使い方について解説します。
初心者でも扱いやすいWeb版から、上級者向けのカスタマイズ環境まで、用途やスキルに応じて幅広い使い方が可能です。
Webブラウザで使う
Stable Diffusionは、以下のようなWebブラウザベースのプラットフォームから簡単に利用できます。
- Dream Studio(公式)
- Hugging Face
- Mage など
インストール不要なので、誰でもすぐに使えるのが嬉しいポイントです。テキストボックスにプロンプトを入力し、生成ボタンを押すだけで数十秒以内に画像が生成されます。
一部サービスでは、生成枚数に応じてクレジット制や有料プランが設定されているため、頻繁に使う場合は事前にしっかりと確認しましょう。料金プランについては、後ほど詳しく説明します。
Stable Diffusion web UIを使う
本格的にカスタマイズして利用したい場合は、「Stable Diffusion web UI」を利用するのがおすすめです。
Stable Diffusion web UIでは、以下のような高度な設定が可能です。
- ポジティブ/ネガティブプロンプトの使い分け
- 画像サイズ、ステップ数、サンプリングアルゴリズムの選択
- LoRA(軽量モデル)の適用
- ControlNetなどの追加機能によるポーズ制御や線画補完
Stable Diffusion web UIの使い方は、自分のPCにローカルインストールする方法と、Google Colabを使ってクラウド上で実行する方法の2通りがあります。
ローカル運用をするには適切な環境を整える必要があるものの、完全オフラインのセキュアな環境で、高精度な画像生成が行えるのがメリットです。
また、慣れてくると、自分好みのスタイルや人物をLoRAで学習させたり、ファインチューニングモデルを読み込んだりと、Stable Diffusionの可能性をさらに広げることができます。
初心者はWebブラウザ版からスタートし、慣れたらweb UIにステップアップしていくのが理想的な流れです。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)の料金プラン
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)の利用料金は、どの環境で使うかによって異なります。
ローカルで無料利用する方法もあれば、クラウドサービスを通じて快適に利用できる有料プランも用意されているため、自分に合ったプランで無理なく活用していきましょう。
ローカル環境なら無料
Stable Diffusionを自分のパソコンにインストールして使う場合、基本的に費用はかかりません。AIモデルだけでなく、Stable Diffusion web UIも無料で利用できます。
ただし、快適な画像生成にはGPU搭載など一定のPCスペックが求められます。
スペックが足りない場合、処理に時間がかかったり、画像生成が途中で止まってしまったりすることもあるため、まずは環境を整えることが重要です。
Dream Studioの料金
Dream Studioは、Stable Diffusionの開発元であるStability AI社が提供する公式のWebツールです。インストール不要で、ブラウザから簡単に画像生成ができます。Dream Studioの料金プランはクレジット制で、以下の通りです。
- 初回登録時に25クレジット(約125枚分の画像生成)が無料で付与される
- 追加クレジットは10ドル(約1,430円※)で1,000クレジット
※2025年6月時点のレート
クレジットは画像の品質や出力サイズによって消費量が異なるため、高画質な画像を生成したい場合はより多くのクレジットが必要となります。
Hugging Faceの料金
Hugging Faceは、AIモデルやデータセットを共有・活用できる人気のオープンソースプラットフォームです。
Stable Diffusionも複数のバージョンが公開されており、無料で試すことが可能です。
ただし、無料版は動作が重かったり生成待ち時間が長くなることがあるため、目的や用途によっては有料プランへの加入を検討しましょう。
Google Colabの料金
Google Colabは、Googleが提供するクラウド上のPython実行環境です。
Stable Diffusionを含む多くのノートブックが公開されており、GPU環境を活用して高品質な画像生成が可能です。
無料プランでも使えますが、利用できる時間や処理性能には制限があります。
より快適に使いたい場合は以下の有料プランへの加入がおすすめです。
- Colab Pro(月額約1,179円)
- Colab Pro+(月額約5,767円)
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)をビジネス活用する際の注意点
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)をビジネスに活用する場合、いくつか注意したいポイントがあります。
特に商用利用においては、ライセンスや法的リスク、品質の確保といった観点から事前の確認と運用ルールの整備が求められるでしょう。
商用利用の可否を確認する
Stable Diffusionのベースモデルは基本的に商用利用が許可されており、Stability AIの公式見解でも、法人による利用が可能である旨が示されています。
ただし、使用するモデルの種類や提供プラットフォームによって利用条件が異なるため、事前にしっかりと確認を取りましょう。
また、注意が必要なのはファインチューニングモデルの利用です。
Stability AIが公式に提供するベースモデルは、比較的自由に商用利用できますが、コミュニティによって開発されたファインチューニングモデルには、それぞれ異なるライセンスが設定されています。
CivitaiやHugging Faceなどの共有プラットフォームで公開されているモデルのなかには、個人利用のみ許可されているものや、クリエイターが独自にライセンス制限を設けている場合もあります。
ビジネス利用を前提とする場合は、概要欄やライセンス表記を必ず確認し、商用利用の可否を明確にしましょう。
著作権・肖像権・商標権に注意
Stable Diffusionはインターネット上の画像データなどをもとに学習されているため、プロンプトの入力次第では、著作物や実在人物に酷似した画像が生成されることがあります。
意図せずに著作権、肖像権、商標権の侵害となる恐れがあるため、広告や商品パッケージ、販売資料などで使用する場合は慎重な判断が求められるでしょう。
例えば、有名アニメのキャラクターを連想させるプロンプトで生成した画像をそのまま使用すれば、著作権違反のリスクが高くなります。
また、特定のタレントやインフルエンサーに似た顔立ちが出力された画像についても、肖像権の侵害と見なされる可能性があるため、人物の表現には特に注意が必要です。
画像の品質は人間の目で確認を
AIが生成する画像は高品質に見えても、細かく見ると違和感のある部分が多々あります。
特に、指の数や配置、耳や目の形、背景との不自然なつながりや、文字情報の歪みなどは、AIがまだ不得意とする領域です。
細かいミスでも、商用利用においては企業やブランドの信頼を損なう恐れがあります。
そのため、AIによって生成された画像は必ず人の目でチェックし、必要に応じて画像編集ソフトなどで微調整を行いましょう。
また、ビジネスで活用する際には、AI画像のチェックフローや使用基準などの運用ガイドラインを策定し、画像の品質管理体制も整備しておくことが重要です。
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)をはじめとした生成AIはビジネスにも有効
Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)は、ローカル環境でも使用可能なオープンソースの画像生成AIで、商用利用も許可されているため、企業にとってメリットの多いツールです。
広告用ビジュアル、Webデザイン、商品イメージ作成など、幅広いビジネスシーンで活用されています。
しかし、ビジネスに有効活用できる生成AIは、Stable Diffusionだけではありません。
テキスト作成やコード生成、アイデア出しなど、AIツールによって得意分野はそれぞれ異なるため、複数のツールを組み合わせて使用することが成功のカギとなるでしょう。
自社の競争力を強化し、業界内での地位を有利にするためにも、生成AIを業務効率化に積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
執筆者

Septeni FOCUS 編集部
「Septeni FOCUS」は、Septeni Japan株式会社が運営するマーケティング担当者のためのメディアです。