LINE APIは、国内で多くの人が利用するコミュニケーションアプリ「LINE」と外部システムの連携に用いる重要な機能の一つです。
LINE APIを活用すれば、チャットボットによる自動応答や自社サイト会員のログイン連携など、多彩なサービスの提供が可能になります。
この記事では、LINE APIの基本的な仕組みや種類別の特徴、使い方や活用方法について、事例を交えて分かりやすく紹介します。
※こちらの記事は2025年7月24日時点の情報です。
LINE APIとは、LINEのプラットフォームと外部のアプリケーションや自社の業務システムを連携させるための開発用インターフェースです。
例えば、LINE公式アカウントと社内の予約管理システムを連携させることで、ユーザーがLINE上から簡単に予約を完了できる仕組みを構築できます。
2024年9月末時点でLINEの国内ユーザー数は9,700万人を超えており、企業にとっては非常に強力なチャネルの一つです。
LINE APIを活用することで、個々のユーザーにパーソナライズされた情報を提供したり、チャットボットによる24時間の自動応答を実現したりと、対応の自動化と効率化が可能になります。
また、顧客データをもとにしたセグメント配信や、アンケートの自動収集、CRMとの連携など、マーケティングやカスタマーサポート領域でも多くの活用事例があります。
顧客満足度の向上やリピート率の改善、業務コストの削減など、さまざまなビジネス効果が期待できるのが、LINE APIの大きな魅力です。
LINEは複数のAPIを提供しています。APIの種類に応じて、LINE上での顧客対応や業務フローの自動化、マーケティング施策の高度化など、幅広い業務支援が可能です。
ここでは代表的なLINE APIの種類を6つ挙げ、それぞれの概要や特徴、できることを解説します。
「LINE Messaging API」は、企業のLINE公式アカウントとユーザーとの間で、双方向のコミュニケーションを可能にするAPIです。
外部システムと連携したメッセージ送信の自動化や、ユーザーの属性・行動にもとづいたきめ細かな対応が可能となります。
また、テキストメッセージの送受信だけでなく、画像・動画・スタンプ・ボタン付きテンプレートなど、視覚的に訴求力のあるリッチなコンテンツの配信が可能です。
主な活用例としては以下のようなものがあります。
「LINEログイン」は、ユーザーが自身のLINEアカウントを使って外部のWebサイトやスマホアプリにログインするための認証機能を提供するAPIです。ユーザーは新たにID・パスワードを作成する必要がなく、LINEからワンタップでログインが完了するため、新規会員登録時の離脱を防ぐ手段として多くの企業が導入しています。
また、初回ログイン時にLINE公式アカウントの友だち追加を促す導線を構築できるというメリットもあります。
さらに、LINEログインとMessaging APIを組み合わせることで、顧客体験を高める以下のような運用が可能です。
「LINE Front-end Framework(LIFF)」は、LINEアプリ内でWebアプリケーションを動かすためのフレームワークです。
開発したアプリはLINE上でそのまま起動するため、ユーザーはブラウザを立ち上げる必要がなく、スムーズにサービスを利用できます。
審査不要で公開でき、開発後すぐに実装・運用が可能なため、スピード感が求められる施策に適しているのが特徴です。
LINEログインと組み合わせることで、ユーザーのLINE IDに紐付く情報を取得し、よりパーソナライズされたサービス提供も可能になります。
LINE公式アカウントのトーク画面やリッチメニューから起動させることが多く、以下のような場面で活用されています。
LIFFを通じてサービスを提供するには、基本的にユーザーにLINE公式アカウントを友だち追加してもらう必要があるため、ファン層の獲得や顧客管理施策との連携にもつながりやすいでしょう。
「LINEミニアプリ」は、LINEアプリ内で使えるWebアプリを開発・提供できるウェブアプリケーションです。
ユーザーは新たなアプリをインストールすることなく、LINE内でサービスを直接利用できます。専用の無料通知機能やユーザーIDの連携機能も活用できるため、より高度な顧客管理やリマインド通知なども実現可能です。
LIFFとよく似た機能ですが、LINEミニアプリは予約や会員証の表示、モバイルオーダー、順番待ち管理など、継続的に利用されるサービスの構築に適しています。
また、LINEヤフー株式会社の事前審査が必要な点もLIFFとの違いです。
LINEアプリ内の「サービス」タブや検索結果などに表示される可能性があり、多くのユーザーに見つけてもらいやすいというメリットもあります。
「LINE広告API」は、LINE広告の運用管理を自動化・最適化できるAPIで、マーケティングの効率向上に大きく貢献します。
APIを活用してECサイトやCRM(顧客管理システム)とLINE広告を連携させると、広告キャンペーンの設定や更新、効果のチェック、ターゲットとなるユーザーの管理など、一連の作業を自社のシステム上からまとめて行えるようになります。
特に、複数の広告キャンペーンを同時に運用している企業にとっては、作業負荷の軽減や運用スピードの向上が大きなメリットです。
LINE広告APIでできることは、以下の通りです。
人的リソースを抑えながら、より高度な広告運用とターゲティングを実現できます。
「LINE Conversion API」は、広告経由で得られた成果を、Webタグを使わずにサーバー経由でLINEに送信できるAPIです。
従来の「LINE Tag」ではブラウザベースでの計測に限定されていましたが、このAPIでは自社サーバー側で管理しているデータ(EC購入、アプリ内の特定アクション、オフライン来店など)を直接LINEに連携できます。
ここでは、代表的な「LINE Messaging API」の使い方を中心に、LINE APIの基本的な導入手順を解説します。
Messaging APIは、LINE公式アカウントを通じてメッセージを自動で送信したり、ユーザーの操作に応じて外部システムと連携したレスポンスを返したりできる強力なツールです。業務効率化や顧客体験の向上を目的として、チャットボットの構築や予約通知、パーソナライズ配信など、さまざまな活用が可能です。
まだアカウントを作成していない場合は、まず「LINE Official Account Manager」からアカウントを作成してください。
※LINE APIを使用するには、LINE公式アカウントの開設が前提です。
関連記事:LINE公式アカウントの無料プランでできること一覧!使い方や機能を紹介
まずはLINE Developers にアクセスし、LINE Official Account Managerのアカウントでログインします。
初めて利用する場合は、次のステップを踏んでアカウントの準備を進めましょう。
1. 開発者情報の登録
名前・メールアドレスなどの基本情報を入力します。これにより、LINE開発者ポータルの利用が可能になります。
2. プロバイダの作成
プロバイダとは、LINE APIを利用する単位(組織・チーム)のことで、複数のAPIチャネルをまとめて管理できます。プロバイダ名は企業名やブランド名など、分かりやすい名称を付けましょう。
3. チャネルの作成(Messaging API)
プロバイダに紐付ける形で、Messaging APIのチャネルを作成します。
チャネルIDやチャネルシークレット、アクセストークンなどが自動で発行され、これらを後ほどプログラムで使用します。
一度作成したチャネルはほかのプロバイダに移動できないため、運用体制や管理者の分担をあらかじめ整理しておくことが重要です。
例えば、複数部署で運用する場合や、外部ベンダーと共同開発を行う場合など、プロバイダごとに管理を分けるとスムーズです。
プロバイダの作成が完了したら、次はLINE Developersの管理画面からMessaging APIを有効化します。
具体的な手順は、以下の通りです。
1. LINE Developersコンソールにログインし、該当のプロバイダを開く
Messaging APIが有効になったら、再度LINE Developersにログインし、該当するチャネルの管理画面にアクセスします。
ここでは、チャネルの詳細設定やアクセストークンの発行、Webhookの登録といった次のステップを進めていきます。
アクセストークンとは、Botがユーザーに対してメッセージを送信するために必要な認証情報です。
トークンを発行することで、APIリクエストが可能になります。
チャネルアクセストークンを発行する手順は、以下の通りです。
1. LINE Developersで対象のチャネルを開き、「Messaging API設定」タブに移動
生成されたトークンは、必ずコピーして安全な場所に保管してください。
トークンが漏れると不正利用される可能性があるため、厳重に管理しましょう。
Webhookとは、LINEプラットフォームから自社サーバーへリアルタイムで通知を送る仕組みです。これにより、ユーザーのアクションに応じた即時レスポンスが可能になります。
Webhook URLの設定手順は、以下の通りです。
1. チャネルの「Messaging API設定」タブに移動
開発初期の段階では、テスト用のエンドポイントを用意しておくと、動作確認やデバッグがスムーズです。
また、LINE公式アカウントをLINEアプリで「友だち追加」しておくと、実際の通知挙動やBotの応答テストがしやすくなるでしょう。
プロフィール情報は、ユーザーがLINE公式アカウントを友だち追加する際に最初に目にする要素です。
プロフィール画像や説明文の内容によっては、ユーザーがブロックするか継続して利用するかを判断する大きな要因となるため、企業・店舗・サービスの信頼性や目的がしっかり伝わるようにしましょう。
プロフィール情報の設定手順は、以下の通りです。
1. LINE Official Account Manager にログインし、対象のアカウントを選択
プロフィール設定は、API連携を扱う「LINE Developers」ではなく、アカウントの運用面を担う「LINE Official Account Manager」から行います。
また、プロフィール画像や説明文は、後からでも編集可能です。
Messaging APIを使って自動応答を行うためには、LINE Official Account Manager上で基本的なメッセージを設定しておく必要があります。
特に、ユーザーが最初に受け取る「あいさつメッセージ」や、特定のキーワードに応じて返信される「応答メッセージ」は、ユーザー体験の土台になるでしょう。
メッセージの設定手順は、以下の通りです。
応答メッセージは、キーワード単位で細かく設定可能なため、問い合わせの多い内容を想定し、あらかじめ用意しておくと運用がスムーズになります。
また、Messaging APIとの組み合わせにより、ユーザーの入力内容を分析して個別対応に発展させることも可能です。
続いては、LINE APIを活用して実際に行われている代表的な取り組みや事例を紹介します。
Messaging APIを活用すれば、ユーザーからの問い合わせに対して自動で返信するチャットボットを構築できます。
例えば、「営業時間は?」「アクセス方法は?」といった定型的な質問に対し、あらかじめ登録しておいたメッセージで即時に応答できるため、スタッフの負担を大幅に削減できるでしょう。
24時間対応も可能なため、顧客満足度の向上にもつながります。
Messaging APIやLIFF、ミニアプリを組み合わせることで、LINE上で空き状況の確認をしたり、メニューや日時の選択、予約を完了できるシステムを構築できます。
使い慣れたLINEから直接操作できるため、ユーザー側の利便性が向上するのも大きなメリットです。
美容院や飲食店、医療機関などで多く導入されており、リマインド通知の送信やキャンセル対応も自動化できるため、業務効率化に貢献します。
LINEログインを導入することで、ユーザーはIDやパスワードを新たに作成することなく、普段使っているLINEアカウントで自社サイトやアプリにログイン可能になります。
登録の手間が大幅に省けるため、離脱率の低下や会員獲得率の向上が期待できるでしょう。
LINEプロフィールから取得した基本情報をもとに、パーソナライズされたサービス提供も可能です。
LINEミニアプリを活用すれば、ユーザーごとに専用のデジタル会員証をLINE上で表示できます。
紙のカードや専用アプリの管理が不要となり、運用コストの削減にもつながるでしょう。
ポイント付与や来店履歴の表示といった機能を追加すれば、さらに顧客との接点を強化できます。
Front-end FrameworkやMessaging APIを活用することで、ユーザーが来店する前日にリマインド通知をしたり、自動で「ご来店ありがとうございます」などの通知を送ったり、来店特典としてクーポンを配布したりすることが可能になります。
再来店を促進し、リピーター育成にも効果を発揮するのはもちろん、位置情報やビーコンとの連携によって、よりユーザーに合った情報を発信できるのもメリットです。
LINE APIを活用すれば、LINE公式アカウントの基本機能だけでは対応が難しい業務の自動化や、ユーザーごとに最適化されたコミュニケーションを実現できます。
Messaging APIによる自動応答、LINEログインによる登録の簡略化、LIFFやミニアプリを通じたサービス提供など、目的や業種に応じて柔軟に活用できるのが魅力です。
特に、「友だち登録までは増えたが、その後の活用が進んでいない」「ユーザー対応にかかる手間を減らしたい」といった課題を抱える企業にとって、LINE APIは大きな解決策につながります。
ユーザーとの関係構築を強化し、ビジネス成果を高めるためにも、自社に合ったLINE APIの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。