2026.6.17

認知の先にある「共感」と「自分ごと化」をどう促すか〜スポットバイトルの生成AI動画で切り拓いた新戦略〜

Septeni FOCUS 編集部

認知の先にある「共感」と「自分ごと化」をどう促すか〜スポットバイトルの生成AI動画で切り拓いた新戦略〜

 

テレビCMで一定の認知は得られたものの、利用促進やシェア拡大にはつながらない――。デジタルマーケティングにおいて、多くの企業がこの「認知と獲得のギャップ」に直面しています。

 

マス広告で広くリーチできても、ターゲット一人ひとりを「自分ごと化」させるのは至難の業です。状況を打破すべくターゲット別に訴求を出し分けようにも、従来の動画制作では1本あたり数百万円のコストと数ヶ月の期間が必要となり、大きな障壁となっていました。

 

ディップ株式会社(以下、ディップ)のスポットのバイトサービス「スポットバイトル」も、まさにこの課題と向き合っていました。テレビCMで認知の土台は築けたものの、競合とのシェアの差を埋めるには、学生・主婦といったターゲット層の「共感」と「自分ごと化」を促し、さらなる認知の拡大を図らなければなりません。この課題を突破したのが、生成AI動画を活用した新たな戦略でした。

 

制作コスト約1/6、制作期間わずか2週間という機動力を活かし、ターゲットごとのインサイトに合わせた動画を展開。結果、ブランドリフト+2.4ポイント*¹を達成し、認知率も+5.8%*² ほど上昇しています。

※1 媒体提供ブランドリフト調査。施策開始前の2025年10月と施策開始後同年11月の実績を比較
※2 ディップ調べ 外部機関定点調査  n=1000 2025年1-12月、毎月実施 認知度調査のスコア



この記事では、ディップの森円花氏、生成AI動画制作を担ったaicrew株式会社(以下、aicrew)の明賀大介氏とNorihiko氏、そして株式会社電通と共にプロジェクトを推進したセプテーニ営業担当の淡野藍世、プランニング担当の松原有梨沙への取材を通じて、「広い認知」と「深い共感」を両立させた戦略の全貌をお伝えします。

 

目次

一定の認知を獲得し、新たに見えてきた課題

―まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。

 

森氏(ディップ):ディップ株式会社の森です。新卒でディップに入社し営業職を経験したのち、広報部に配属となり、コーポレートやサービスの広報活動に従事してまいりました。現在はマーケティングのマスプロモーション・認知領域のチームの中で、スポットバイトルのサービス施策を担当しておりまして、今回のプロジェクトでは、セプテーニ様、電通様、aicrew様と連携しながら進めてまいりました。

 

淡野(セプテーニ):Septeni Japan株式会社の淡野です。営業担当として、ディップ様のメインフロントを務めています。2025年7月からディップ様を担当させていただいており、デジタル広告全般のディレクションを行っています。今回のプロジェクトでは、生成AI動画の活用を含めた認知施策全体の設計と進行管理を担当しました。

 

松原(セプテーニ):同じくSepteni Japan株式会社の松原です。クリエイティブプランナーとして、コミュニケーション設計やクリエイティブの企画を担当しています。今回は、ターゲットごとのインサイトを抽出するためのデプスインタビュー設計から、動画コンセプトへの落とし込みまでを担当させていただきました。

 

明賀氏(aicrew):aicrew株式会社 代表取締役の明賀です。長年広告領域に携わっており、現在はAIクリエイティブの制作事業と、企業向けにAI活用の内製化を支援する事業を展開しています。AIクリエイティブは、適切なプロセスを踏めば比較的取り組みやすい領域でもありますので、そうした導入支援にも力を入れています。

 

Norihiko氏(aicrew):同じくaicrew株式会社のNorihikoです。生成AI動画の企画・ディレクションを担当しています。今回のプロジェクトでは、クリエイティブ制作全般を統括させていただきました。セプテーニさんが設計された企画やインサイトをもとに、それを動画として具現化する役割を担っています。

 

―まず、スポットバイトルというサービスについて教えてください。どのような背景から生まれたサービスなのでしょうか。

ディップ株式会社 森円花氏 
ディップ株式会社 森 円花 氏 


森氏(ディップ):近年、スポットワーク市場が急成長しています。タイムパフォーマンスを重視し、多様な働き方を求めるユーザーが増える一方で、スポットワーカーの賃金が通常のアルバイトよりも低いという課題がありました。

弊社はこうした社会課題に対して積極的に取り組む姿勢を持っており、2024年10月に独自機能「Good Jobボーナス」を備えたスポットのバイトサービス「スポットバイトル」をローンチ。「バイトルで中長期の仕事を、スポットバイトルで単発の仕事を」と、ユーザーのLTV(顧客生涯価値)向上を見据えたサービス展開を行っています。

―ローンチ後のマーケティング施策について教えていただけますか。

森氏(ディップ)ローンチ後は、テレビCMを中心に、マス広告・デジタル広告を展開していました。「スポスポスポスポスポバ」というキャッチーなフレーズを民謡と掛け合わせたCMで、まずは広くサービス名を浸透させる戦略です。その結果、一定の認知を獲得し、「スポットバイトル」という名前の認知には成功していました。

―認知率が向上した一方で、課題も見えてきたと伺いました。

森氏(ディップ):初速の認知率の伸びについては、社内でも一定の評価がありました。ただ、そこから3〜4ヶ月経って認知率が頭打ちになってしまい、競合とのシェア差は縮まりませんでした。特に学生・主婦層での伸び悩みが顕著でした。「スポットバイトル」という名前は覚えてもらえたものの、「自分が使うサービス」としては認識されていないことが次の課題となっていました。

―その課題の要因についてはどのように分析されましたか。

Septeni Japan株式会社 淡野藍世

Septeni Japan株式会社 淡野 藍世

淡野(セプテーニ):テレビCMではフレーズを繰り返す「連呼型」の訴求で広い認知を獲得することができました。しかし、生活者のインサイト、つまり本音の部分に訴求し、「深い共感」を獲得するには、新たに戦略を考える必要がありました。学生・主婦・社会人など、ターゲットによってスポットワークを使う動機はまったく異なります。1つのクリエイティブで全員に刺さる訴求は難しく、ターゲットごとのインサイトを捉えたアプローチが必要だと考えました。

―その課題に対して、どのような解決策を提案されたのでしょうか。

スポットバイトルの認知拡大・利用意向促進

淡野(セプテーニ):ターゲット別にクリエイティブを用意し出し分けるOTT広告配信です。テレビCMで築いた「広い認知」を土台に、OTT広告で「深い共感」を獲得しにいく戦略です。
ただ、従来の手法でターゲットごとのインサイトに深く刺さる動画を複数パターン制作するには、コストも期間もかかり、現実的ではありません。加えて、ディップ様としては11月の求人需要期に間に合わせたいというご意向もありました。そこで生成AIを活用した動画制作をご提案しました。

―生成AI動画という提案に対してどのような印象を持たれましたか。

森氏(ディップ):実は、弊社の別のサービスで生成AI動画を活用した実績があり、想定以上のクオリティで仕上がることは実感していましたが、スポットバイトルで展開する際には、やはり「AIっぽさ」が出てしまわないか、ブランドイメージを損なわないかという懸念はありました。セプテーニ様からは「インサイト設計を徹底したうえでAI制作に入る」というご提案をいただき、単なるコスト削減の手段ではなく、戦略的な意図があることが決め手になりました。

「AIで作る」ではなく「インサイトを突く」ための戦略設計

―今回のプロジェクトは、4社での協業体制と伺いました。この体制はどのように構築されたのでしょうか。

淡野(セプテーニ):ディップ様・電通・セプテーニ・aicrewさんの4社で協業体制を構築しました。ディップ様は広告主として方針決定とブランド管理を担い、電通はマス広告を含む全体戦略を統括。セプテーニはデジタル領域のプランニングと進行管理、aicrewさんには生成AI動画の制作を担当いただきました。各社の強みを活かしながら、部分最適ではなく全体最適で戦略を設計できる体制を整えています。

aicrew株式会社 代表取締役 明賀大介氏

aicrew株式会社 代表取締役 明賀 大介氏

明賀氏(aicrew):弊社は生成AI動画の制作パートナーとして参画しました。AIを使うこと自体に価値を置くのではなく、スピード・コスト・クオリティのすべてにおいて実写と比較検討できるレベルのものを納品する。それが弊社のテーマです。今回は4つのターゲット別動画を、短期間で高品質に仕上げることがミッションでした。

―体制が整った後、具体的にどのようなプロセスで制作を進められたのでしょうか。

松原(セプテーニ):最初に徹底したのは「いきなりAIで作らない」ということです。インサイトが曖昧なままAI制作に入っても、結局ターゲットに「刺さらない」動画になってしまいます。AIはあくまで制作手段であり、まずは「何を伝えるべきか」を明確にする必要があります。そのため、まずはデプスインタビューを実施し、ターゲットごとのインサイトを徹底的に抽出しました。

―デプスインタビューについて誰を対象に、どのような形式で実施されたのか具体的に教えてください。

松原(セプテーニ):学生・主婦・社会人・フリーターの4つのターゲットセグメントを対象に、計24名へインタビューを実施しました。セプテーニにはコミュニケーションプランニングの専門チームがあり、そのチームと連携しながら設計・実施しています。ユーザーに対し、1対1の形式で、「なぜスポットワークに興味を持ったのか」「どんな場面で使いたいと思うか」といった問いを深掘りしていきます。定量調査では見えない「本音」や「行動の背景にある感情」を引き出すことを重視しました。

―インタビューの結果、どのような発見がありましたか。

Septeni Japan株式会社 松原 有梨沙

Septeni Japan株式会社 松原 有梨沙

松原(セプテーニ):定量調査では、スポットワークをする動機として「お金を稼ぎたい」がどのターゲット層でも共通して上位に挙がります。ただ、デプスインタビューでその先にある「なぜ」の部分を深掘りしていくと、セグメントによってまったく異なる本音が見えてきました。

学生は「空いた時間の穴埋めをしたい」と、時間効率を重視し拘束時間の短さを求めていました。一方、主婦からは「社会とのつながりを求めている」との声が挙がり、家庭の役割から離れる時間に価値を感じていました。フリーターは「欲しい物があるからすぐにでも稼ぎたい」と目的が明確で、即金性を重視。そして社会人は「いつもの仕事に飽きた」「違う仕事で気分転換したい」という、金銭以外の動機が存在していました。

―「気分転換」という動機は、単なる金銭目的とは異なる切り口ですね。

森氏(ディップ):社会人の「気分転換」という動機は、私たちマーケティングチームとしても深掘りしきれていなかった部分でした。スポットワークはお金が必要な人が使うもの、という認識が前提にあったんです。

しかし実際には「本業に退屈している」「違う仕事を体験してみたい」というニーズも存在していた。副業というよりも、アルバイト感覚で一時的に働きたいという方も多いことが分かりました。こうしたインサイトは、従来のマーケティング調査では見えてこなかった部分です。

―抽出したインサイトを、どのように動画コンセプトへ落とし込んでいったのでしょうか。

松原(セプテーニ):4つのターゲットインサイトをもとに、それぞれ異なる動画コンセプトを設計しました。学生向けは「授業の合間」篇、主婦向けは「家事の合間」篇、社会人向けは「気分転換」篇といった形です。冒頭で各ターゲットが共感できるシーンを見せ、その後に「そんなときはスポバしよ」という統一メッセージで解決策としてスポットバイトルを提示します。共通のフォーマットを持たせつつ、インサイトに合わせて訴求を変える設計にしています。

Norihiko氏(aicrew):企画の段階でインサイトが明確に言語化されていたので、制作側としては非常に進めやすかったですね。AIは自由度が高い分、指示が曖昧でもそれなりの動画は作れてしまいます。ただ、それではクライアントの意図からズレたものができ上がってしまう。今回はインサイトや演出の方向性を具体的に共有いただいていたので、皆さんの共通認識に沿った動画を最短距離で仕上げることができました。

コスト1/6、制作期間2週間—「AIっぽさ」との戦いを超えて

―生成AIを活用することにより、需要期に間に合わせることはできたのでしょうか。

松原(セプテーニ):はい、11月の需要期に間に合わせることができました。4つのターゲット別動画を約2週間で制作・納品しました。従来の動画制作では1本あたり3〜5ヶ月かかることも珍しくありませんので、大幅な短縮です。縦型素材への変換も1週間で対応いただきました。

―コスト面ではどの程度の効率化が実現できたのでしょうか。

淡野(セプテーニ):従来の手法では、1本あたり200万円前後の制作コストがかかります。今回の生成AI動画では、制作コストを約1/6に抑えることができました。削減できた分をバリエーション制作に投資することで、ターゲット別の訴求を実現しています。予算の制約があるなかで複数パターンを展開できたのは、生成AIならではの強みです。

 

実際に制作された動画

 ◆スポットバイトルCM「そんな時はスポバしよ 授業の合間」篇

  スポットバイトルCM「そんな時はスポバしよ 気分転換」篇

  スポットバイトルCM「そんな時はスポバしよ 欲しい物」篇

  スポットバイトルCM「そんな時はスポバしよ 家事の合間」篇

 

―生成AI動画の制作において、最も苦労された点は何でしょうか。

aicrew株式会社 Norihiko氏

aicrew株式会社 Norihiko氏

Norihiko氏(aicrew):やはり「AIっぽさ」の排除ですね。生成AI動画で最も課題となるのは、人物の動きや表情の不自然さです。視聴者に違和感を与えてしまうと、メッセージが届く前に離脱されてしまう。AIは1回の生成で約5秒の動画を作れるのですが、5秒をそのまま使うと違和感が出やすい。それを2〜3秒に区切って自然な部分だけを選び、つなぎ合わせることで人間らしい動きを実現しています。

明賀氏(aicrew):ツールは誰に対しても平等なので、差が出るのはクリエイターの目と経験です。生成された素材のなかから「ここなら自然に見える」という部分を選び抜く力が問われます。弊社には実写映像の制作経験を持つメンバーもおり、そうした知見を活かしてAI特有の違和感を排除しています。

―特に難航した動画はありましたか。

松原(セプテーニ):社会人向けの「気分転換」篇ですね。そもそもこのインサイト自体、クリエイティブにどう落とし込むかの議論に時間をかけました。「新しいことを試したい」という訴求だけだと、転職を連想させてしまう懸念があったんです。

森氏(ディップ):私たちとしても、ここは慎重に進めたいポイントでした。細かい部分まで何度も確認・修正を重ねていただけたのは、非常に安心感がありましたね。

松原(セプテーニ):スポットワークならではの気軽さをどう伝えるか、イラストや訴求表現も細かく修正しながら、誤解やズレを丁寧に排除していきました。リアルな心情に寄り添う表現を追求しています。

森氏(ディップ):AI制作だからといって「お任せ」ではなく、ブランドの意図を丁寧に汲み取っていただけたため、初稿が上がってきた段階で、チーム内では「全然AIっぽくない」という感想でした。修正のやり取りも、人物の動きや表情といったAI特有の違和感についてではなく、「この余白をもっと活用したい」といった構成面の調整が中心でした。結果として、AIで作ったとは思えないクオリティの動画に仕上がりました。

―テレビCMとの整合性については、どのように担保されたのでしょうか。

淡野(セプテーニ):4社の協業体制で最も重視したのは、テレビCMとの整合性を保つことです。生成AI動画だけが独立した存在になると、ブランドの一貫性が損なわれてしまいます。電通が手がけるテレビCMとトンマナをそろえ、ハイブリッド戦略として機能させることを意識しました。

―具体的には、どのような形でトンマナを統一したのでしょうか。

松原(セプテーニ):動画のラストに、テレビCMと近い表現・トンマナでブランディング要素を配置しました。スポットバイトルのロゴやブランドカラーの黄色をしっかり取り入れ、細部まで統一感を意識しています。

―ディップとして、ブランド毀損につながるリスクへの懸念はどのように払拭されましたか。

森氏(ディップ):当初は「AI動画でブランドイメージが毀損されないか」という不安は正直ありました。しかし実際の仕上がりを見て、テレビCMと違和感なく共存できていると感じています。むしろターゲット別に深く刺さる訴求ができたことで、ブランド価値が高まったのではないかと思います。社内でも好事例として報告させていただいており、今後も生成AI動画の活用を前向きに検討しています。

定量・定性で実証された成果

―施策実施後の成果について教えてください。

ターゲット別ブランドリフト

淡野(セプテーニ):YouTube配信におけるブランドリフト調査では、AI制作動画で+2.4ポイント*¹を達成しました。今回測定したのは単純な認知度ではなく、ユーザーが『自分ごと化』できているかを測る「比較検討意向」という、より関与度の深い指標です。ターゲティングを行ったAI動画と、特にターゲティングを絞らずに配信したテレビCM動画を比較すると、AI動画の方がリフト幅として高い結果となりました。ターゲット別にインサイトを突いた訴求が、比較検討意向の向上に寄与したと考えています。

また、特に伸び悩んでいた学生・主婦層での反応が改善しました。学生向け動画は絶対リフト+2.4ポイント、相対リフト13.8ポイントを記録。主婦向け動画も絶対リフト+2.0ポイント、相対リフト10.3ポイントと良好な結果でした。ターゲットごとのインサイトに寄り添った訴求が効果を発揮したと捉えています。

―施策の手応えは感じられましたか。

森氏(ディップ):以前のテレビCMでは得られなかった「自分ごと化」の手応えを感じています。
ちょうどAI動画の配信と新しいテレビCMの投下が重なった時期に、認知率は+5.8ポイント*²を記録しました。テレビCMだけの成果ではなく、AI動画の貢献もあったと評価しています。

また、営業資料に「ターゲティング広告開始」と記載できるようになったのも大きく、ターゲット別に求人を訴求したいクライアントに刺さるプロモーションとなりました。結果として求人獲得案件数が130%に伸長するという、事業への波及効果もありました。

―この成果を、セプテーニとしてはどのように評価されていますか。

淡野(セプテーニ):テレビCMで築いた「広い認知」と、生成AI動画による「深い共感」の両立が実現できたと考えています。ハイブリッド戦略が想定通りに機能し、定量・定性の両面で成果が出たことは大きいですね。テレビCMもしっかりリフトに寄与していますので、それぞれの強みを活かした全体最適の戦略設計が成果につながったと考えています。

―aicrew社としては、この成果をどのように受け止めていますか。

明賀氏(aicrew):生成AI動画が「コスト削減のための手段」ではなく、「成果を出すための戦略」として機能したことが何より嬉しいですね。インサイト設計を徹底し、品質を担保すれば、しっかりと効果が出せることが実証されました。AI動画の可能性を示す好事例になったと感じています。

AIを活用した「ハイブリッド戦略」が拓く次のステージ

―今回の成功を受けて、今後どのような展開を考えていらっしゃいますか。

淡野(セプテーニ):テレビCMは「広い認知」を獲得するうえで、引き続き重要な役割を担います。一方で、制作リードタイムの長さという課題もあります。同じクリエイティブを長期間配信し続けると認知の頭打ちが起きやすくなります。今後もテレビCMと生成AI動画のハイブリッド戦略で、両者の強みを活かす仕組みを構築していきたいですね。

森氏(ディップ):今回の成功を受けて、生成AI動画の横展開を進めていく予定です。季節性に合わせた素材、例えば夏やクリスマス、年末年始、GWなどに合わせたクリエイティブを、AIのスピード感を活かして量産していきたいです。

また、エリア別や職種別の訴求も検討しています。北海道と沖縄ではアルバイトの内容も違いますし、フードやイベントスタッフなど職種によってもインサイトは異なりますから。

―生成AIならではの展開可能性について、どのようにお考えですか。

明賀氏(aicrew):インサイトをいくつでも提示していただければ、その分だけ動画を作れるのがAIの強みです。エリア別・シーズン別・ターゲット別と、いろいろなパターンをサクッと作れる。撮影なしでこのクオリティが出せると認識いただければ、PDCAのスピードは格段に上がります。

Norihiko氏(aicrew):撮影難易度の高いシチュエーションも、AIなら表現できます。実際のロケでは難しい場面を代替案として制作できるのは、生成AIならではの強みですね。

―最後に、同じような課題を抱える企業へのメッセージをお願いします。

AIを活用した「ハイブリッド戦略」が拓く次のステージ
森氏(ディップ):「認知は獲れているのに成果につながらない」という課題を抱えている企業は多いと思います。今回の成果で何よりも大事だったのは、インサイトの発掘でした。ターゲットが本当に求めていることを深く理解し、それを的確に表現する。生成AIは、そのプロセスを高速かつ高品質で実現できる手段です。コスト削減のためのツールではなく、インサイトを最大限に活かすための武器として、同じような課題を抱えている企業の皆さんにもぜひおすすめしたいですね。

淡野(セプテーニ):マス広告とデジタル広告を対立構造で捉えるのではなく、それぞれの強みを組み合わせることが重要です。今回のプロジェクトは、その「ハイブリッド戦略」が機能することを実証できた事例だと考えています。同じような課題を抱えている企業の皆さまに、一つの選択肢として参考にしていただければ幸いです。

 

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執筆者

Septeni FOCUS 編集部

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