スマートフォンで動画を楽しみながら、そのまま商品を購入できる「TikTok Shop」は、SNSとECを融合させた新しいサービスとして世界的に注目されています。
多くの人から支持を集めており、個人クリエイターだけでなく、企業が自社商品やサービスの販路を広げる手段としても活用されています。
この記事では、TikTok Shopの主な機能や導入のメリット、具体的な始め方について詳しく解説します。
※こちらの記事は2025年9月30日時点での情報です。
TikTok Shopとは、TikTokアプリ内で商品販売と購入ができる新しいEC機能です。
動画やライブ配信を活用して商品を紹介できるため、個人クリエイターや企業は、自分のコンテンツを販路に変え、商品やサービスをアプリ上で販売することが可能になりました。
従来のSNSのように外部リンクへ誘導する必要がなく、気になった商品をアプリ内ですぐに購入できるため、ユーザーにとっても使いやすいサービスと言えます。
豊富なプロモーション機能やアフィリエイトプログラムも用意され、インフルエンサーと企業が協力しやすい環境が整備されたため、TikTok Shopは単なる販売機能にとどまらず、動画プラットフォームならではの拡散力を活かしたマーケティングの場としても注目されています。
TikTok Shopは、従来のECサイトにはない独自のメリットを提供しています。
主な機能は以下の5つです。
ライブコマース機能は、配信者がリアルタイムで商品を紹介しながら販売できる機能です。
配信者はユーザーからの質問に即座に回答できるため、商品の使い方や特徴をその場で説明し、購入の不安を解消できます。
例えば、コスメの使用感をライブでデモンストレーションしながら販売する場合、ユーザーは「実際に使うとどう見えるか」を確認しながら購入を検討することが可能です。
リアルタイムでコミュニケーションを取ることでスムーズに購入を促せます。
商品ショーケース機能は、TikTokプロフィールに商品一覧を表示できる仕組みです。
動画やライブで紹介した商品を一覧化することで、ユーザーは気になったタイミングですぐに購入へ進むことができます。
特に、フォロワー数が多いクリエイターにとっては、自分のブランドやおすすめ商品をまとめて提示できる有効な販売チャネルになるでしょう。
ショップタブは、TikTokアプリ内に用意された総合的なマーケットプレイスです。
ユーザーは、ショップタブからさまざまなブランドや商品を検索・閲覧でき、ECサイトのように比較しながら買い物を楽しめます。カテゴリーごとに商品を探せる点も利便性が高い特徴です。
ショップタブは、TikTok Shopを利用する購買意欲の高いユーザーに直接リーチできるため、企業にとっても魅力的な機能です。最初から購入目的で訪れるユーザーが多いため、成約率の高さが期待できます。
ただし、ショップタブへ自社の商品を掲載するためには、TikTok Shopの出品者として審査に通過する必要があります。
TikTok Shopには、インフルエンサーやクリエイターが提携した企業の商品を紹介し、成果報酬を得られるアフィリエイト制度があります。
従来のアフィリエイトは、動画や記事から外部サイトへ誘導し、そこで購入が発生して初めて成果が確定する仕組みでした。
TikTok Shopではアプリ内で購入が完結するため、リンク遷移のハードルがなく、より成果につながりやすいのが魅力です。
さらに、TikTok Shopのアフィリエイトプログラムは、企業側にとっては信頼できるインフルエンサーを通じて効果的に商品を拡散でき、インフルエンサー側も自然に収益化を目指せるため、双方にメリットのある仕組みとなっています。
TikTok Shop広告では、商品ページへの誘導を目的とした広告配信が可能です。
例えば、自社のアカウントで公開してきた動画のうち、特に「いいね」や「シェア」が多いレビュー動画に広告機能を活用すれば、興味を持ったユーザーを自然に購入ページに誘導でき、広告効果を高められます。
高度なターゲティング機能を利用すれば、年齢や興味関心に応じて商品を表示できるため、従来のSNS広告以上の販促効果が期待できるでしょう。
TikTok Shopを始めることで、以下のようなメリットが得られます。
TikTokの主要ユーザーは18〜34歳で、消費意欲が高く、新しいトレンドやブランドに敏感な世代です。
従来の広告では届きにくかった10代の潜在顧客にリーチできるほか、動画という直感的で視覚的な表現を活かせる点も、商品への理解や購買意欲を高める効果が期待できるでしょう。
フォロワー数が少ないアカウントでも、1つの投稿がバズれば一気に拡散され、売上に直結する可能性があります。
また、費用面でも魅力があります。アカウント運営者が負担するのは売上の7%の手数料のみで、初期費用や月額固定費は一切不要なため、個人クリエイターや中小企業もリスクを抑えながら参入しやすいでしょう。
すでにインフルエンサーとして活動している場合は、TikTok Shopのアフィリエイトプログラムを組み合わせることで、自身の発信力やフォロワーを活かしたマネタイズも可能です。
アメリカやイギリス、東南アジアなどの海外では、2022年頃からTikTok Shopのサービスが提供されています。
一方、日本での正式なサービス開始は2025年6月30日で、主要国のなかでは比較的遅い導入となりました。これは、日本におけるEC市場の競争状況や物流体制、法規制への対応を慎重に進めてきた結果と考えられます。
また、2025年9月現在も海外で実装されている「Fulfilled by TikTok(FBT)(TikTokが梱包から発送、返品までを一貫して代行するサービス)」などの一部機能は提供されておらず、今後も随時機能が追加されていくものだと予想されます。
TikTok Shopを始めるには、まず「TikTok Seller Center」から出店者登録を行い、審査に通過する必要があります。
基本的な流れは以下の通りです。
TikTok Shopへの出店は、企業(法人)だけでなく、個人でも可能です。
手続きがすべて完了すれば、ショップに商品を追加できるようになります。
アカウント情報としては、国または地域、事業所の住所、電話番号、返送先の住所などが求められます。
返送先には倉庫や物流会社の集荷先を指定することも可能です。ビジネスタイプで登録する場合は、法人名や雇用識別番号(EIN)、登記証明書などの事業関連書類が必要となります。
本人確認書類は郵送ではなく、Seller Center上でアップロードして提出する仕組みになっており、審査もオンラインで完結します。
審査に通過すれば商品登録が可能となり、商品画像や説明文、価格、在庫数を入力して出品作業を進められます。
メリットとしても触れた通り、TikTok Shopへの出店に初期費用や月額固定費はかからず、必要となるのは販売手数料7%のみです。この中には決済手数料も含まれています。
大手ECサイトでは、月額利用料や出店料が必要なケースが多いため、固定費が一切かからないTikTok Shopは、低リスクで導入しやすい仕組みです。
ただし、売上を拡大するためにTikTok広告を利用したり、発送を外部倉庫に委託したりする場合は、別途費用が発生することもあるため、運用状況によってコストの見直しは必要になるでしょう。
ここからは、TIkTok Shopへの出店を検討している企業に向けて、よくある疑問にお答えします。
TikTok Shopでは、ユーザーが安心して買い物できる環境を守るため、出品できない商品カテゴリが定められています。
2025年9月現在、以下の商品は販売禁止です。
また、以下の商品を販売する場合には、事前にTikTok Shopからの承認を得る必要があります。
ガイドラインに違反して出品登録を行った場合、商品削除やアカウント停止といった措置が取られる可能性があるため、販売前に最新の規約や承認手続きの要件を確認しておくことが重要です。
TikTok Shopへの出店にあたっては、本人確認や事業の実在性を証明する書類を提出する必要があります。
個人と法人で求められる書類が異なるため、事前に準備しておくとスムーズです。
【個人の必要書類】 |
【法人の必要書類】 ・事業証明書(登記事項証明書、印鑑証明書のいずれか) ・代表の身分証明書(日本のパスポート、日本の運転免許証、在留カードのいずれか) ・住所証明(公共料金の請求書、住民票、銀行の取引明細書、クレジットカードの請求書のいずれか) |
すべての書類は有効期限内のものを用意しましょう。
書類不備があると審査が遅れるため、最新情報を確認しておくと安心です。
日本のTikTok Shopでは、原則として出品者自身が商品の配送を行います。
注文が入ったら配送業者を利用して発送し、追跡番号を登録しましょう。
発送期限は注文から一定期間内に設定されているため、在庫管理や梱包体制を整えておくことがスムーズな運営につながります。
「Fulfilled by TikTok(FBT)」 は、TikTok Shopが提供するフルフィルメントサービスです。
TikTok Shopで販売された商品の在庫管理、梱包、配送、返品までをTikTokが一括で代行します。
イギリスやアメリカ、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールなどではすでに導入され、Amazonの「フルフィルメント by Amazon(FBA)」に近い仕組みとして機能しています。
「対象商品の3日以内の無料配送」が実現されている地域もあり、顧客満足度向上が期待できる魅力的なサービスと言えるでしょう。
2025年9月時点において日本では未実装ですが、今後の導入が期待されています。
TikTok Shopの販売代金は、出品者が選択した決済サイクルに基づいて、指定口座へ自動的に振り込まれます。
以下の3つの決済期間のうち、ニーズに合うものをSeller Centerから設定できる仕組みです。
【決済期間の種類】
決済期間が終了すると、以下の条件を満たした場合に毎月1日と14日に入金が行われます。
【入金の条件】
なお、新規出店者については特例があり、初回の販売代金は注文精算後に即時支払いが行われます。その後は通常のサイクルに移行するため、初期の資金繰りに余裕を持てるのも嬉しいポイントです。
TikTok Shopに支払う販売手数料や広告出稿費用については、適格請求書発行の対象となります。インボイス制度に対応しているため、消費税の仕入税額控除を受けるための書類として活用可能です。
ただし、クリエイターやTikTok Shopパートナーなど、ほかの取引先に支払った料金の請求書の発行を、TikTokに求めることはできません。
TikTok Shopに掲載されているすべての商品は、TikTok Shopポリシーおよびコミュニティガイドラインに準拠しています。
不適切な商品を販売したアカウントについては厳格な対応措置が取られているため、運用企業はもちろん、ユーザーにとっても安心して利用し続けられるサービスです。
サービス提供開始と同時に、大手企業から中小企業まで多数の企業がTikTok Shopに参画していることからも、安全性は高いと考えて良いでしょう。
TikTok Shopは、2025年6月に日本でサービスが開始されたばかりの新しい市場ですが、ショート動画やライブ配信を活用し、18〜34歳の購買力のある世代にダイレクトにリーチできるのが魅力です。
初期費用や月額費用がかからないため、個人クリエイターや中小企業も参入しやすいでしょう。
今すぐに取り組めば、競合が少ない段階でブランドを認知させるチャンスにもなります。
自社のEC戦略に組み込み、新たな販売チャネルとして積極的に活用してみてはいかがでしょうか。