Meta社が開発した大規模言語モデル「Llama(ラマ)」は、その高い性能とオープンな開発環境で注目を集めています。
しかし、「Llamaとは具体的に何か?」「ChatGPTとの違いは?」「日本語には対応しているの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Llamaの特徴やできること、日本語対応の状況や活用事例まで、初心者向けに分かりやすく解説します。
※こちらの記事は2025年7月15日時点の情報です。
Llama(ラマ)は、アメリカのMeta社が開発したオープンウェイトの大規模言語モデル(LLM)です。初版が2023年2月に公開された後、同年7月に「Llama 2」、2024年4月に「Llama 3」が発表され、2025年4月にはLlama 4(Scout・Maverick)が発表されるなど、現在も改良が重ねられています。
Llamaはソースコードや学習モデルが公開されている「オープンウェイトAI」でありながら、質問応答や文章生成、要約、翻訳、コード生成など、ChatGPTのような幅広い自然言語処理タスクに対応しています。
特に、Llama 2以降は大規模な学習データにより性能が大きく向上し、企業の独自開発やエッジデバイスへの実装など、幅広いシーンで注目されています。
Llama(ラマ)には複数のバージョンがあり、それぞれ処理能力や機能、対応言語、ライセンス形態などが異なり、用途に応じた使い分けが可能です。
ここでは、各バージョンの特徴と進化のポイントについて詳しく解説します。
2023年2月に初めて公開された「LLaMA(Large Language Model Meta AI)」は、Meta社が研究者向けに提供した最初のモデルです。
7B(70億)、13B(130億)、33B(330億)、65B(650億)といった複数のパラメータサイズが用意されており、特に小規模モデルでも高い精度を発揮する点が注目されました。
ただし、LLaMAは商用利用が許可されておらず、大学や研究機関などに限定的に提供されていた点が特徴です。
自然言語処理の研究コミュニティでの検証やベンチマーク比較の材料として利用され、以降のLlamaシリーズの開発基盤となりました。
Llama 2は、2023年7月にリリースされた第2世代モデルです。Llamaシリーズのなかで、初めて商用利用が正式に許可されたオープンウェイトモデルであることが、大きな特徴となっています。
パラメータサイズは7B(70億)、13B(130億)、70B(700億)の3種類が提供され、Hugging FaceやAWS、Azureなどのクラウド環境を通じて誰でも利用できるようになりました。
また、Meta社とMicrosoft社が提携したことで、Azureプラットフォームを通じての利用も強化され、企業による開発・製品への実装が加速しました。セキュリティ面も改良され、より安心して実運用に組み込めるモデルとして普及が進んでいます。
2024年4月に登場したLlama 3は、さらにスケールアップした次世代モデルで、15兆以上のトークンで学習された強力な自然言語処理能力が特徴です。推論力・論理的思考能力が向上し、複雑な質問応答やプログラミング補助といった高度なタスクにも対応できるようになりました。
パラメータサイズは8B(80億)・70B(700億)が提供されており、Llama 2と比較して事前学習と事後学習を改善したことによりモデル応答の多様性が向上しています。
また、2025年4月現在では400B(4,000億)のパラメータサイズのテストを行っているため、さらなる機能強化が期待できます。
Llama 3.1は、2024年7月にリリースされた改良バージョンで、8B(80億)、70B(700億)、そして405B(4,050億)の3種類のパラメータサイズが用意されています。 特に405Bは非常に高い精度を持ち、より専門性の高い文章生成や技術文書の要約なども可能です。
また、言語対応も強化され、Llama 3.1では英語に加えて日本語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ヒンディー語、タイ語といった計8言語での精度が向上しました。各国の市場ニーズに対応できる柔軟なAI開発が可能となり、より実用性が高まっています。
2024年9月に発表されたLlama 3.2では、これまでのテキスト特化型から進化し、テキストと画像を同時に処理できる「マルチモーダル機能」が追加されました。
Llama 3.2のパラメータサイズは11B(110億)と90B(900億)では視覚情報を活用した説明生成や画像キャプション生成、さらには画像とテキストを組み合わせたインターフェースの構築など、新しい応用が可能となっています。
さらに、軽量タイプの1B(10億)と3B(30億)では多言語テキスト生成やツール呼び出し機能が備わっているため、目的に合わせて使い分けることが可能です。
量子化技術を採用することでモデルサイズ最大56%、メモリ使用量41%を削減、従来比で2〜4倍の高速化を実現し、一般的なモバイル端末でも軽量かつ快適に動作する設計となっています。
Llama 3.3は、2024年12月にリリースされました。 Llama 3.3のパラメータサイズは70B(700億)、Llama 3.1の405B(4,050億)よりも少ないものの、同等レベルのパフォーマンスを実現しているのが特徴です。
マルチモーダル機能は搭載されていないものの、軽量でテキスト処理に特化しており、チャットボット開発や文書要約、翻訳、法律文書の分析など、自然言語処理における幅広いニーズに応えられる高精度なモデルです。
Llama 4は、2025年4月にリリースされた最新世代の大規模言語モデルです。Llama 3シリーズからさらに性能が向上し、より高度な推論能力と多言語処理機能を備えています。自然言語理解と生成の精度が一段と高まり、複雑な指示への対応力や長文の一貫性が大きく向上しました。
Llama 4シリーズのうち、「Llama 4 Scout」と「Llama 4 Maverick」の2つがリリースされました。Llama 4 Scoutのパラメータサイズはは軽量モデルで109B(1,090億)、Llama 4 Maverickは推論やコーディングに特化したモデルで総パラメータ数は400B(4,000億)です。
さらに、現在開発中(2025年7月現在)の「Llama 4 Behemoth」は、2T(2兆)の総パラメータ数を備えています。これまでのLlamaシリーズでもっともハイレベルなAIモデルで、近日中のリリースが期待されています。
近年、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiをはじめ、さまざまなAIモデルが登場しています。
ここからは、Llama(ラマ)がほかの生成AIモデルと比較して優れている点、Llamaならではの魅力を紹介します。
Llamaは、高度な自然言語処理能力を持っており、文章の理解力や推論能力、質問応答の精度に優れているのが特徴です。
ベンチマークテストでは、自然言語理解や数学的推論、プログラミングコードの生成といった複雑なタスクにおいて、Llama 3のデータではAnthropic社の「Claude 3 Sonnet」やGoogleの「Gemini Pro 1.5」といった競合モデルを上回るスコアを記録しています。
そのため、ビジネス文書の作成、カスタマーサポート、データ分析など、幅広い実務でも活用可能です。
Llamaは、少ないパラメータ数でも高い精度を発揮するのが大きな魅力です。
軽量モデルでも、日常的なやり取りや一般的な業務支援には十分な性能を発揮します。
さらに、Llamaシリーズは計算効率にも優れており、トークン処理の高速化やAttention Routingなどの仕組みにより、応答のスピードが速く、負荷も少ないというメリットがあります。用途や処理能力に応じて柔軟にモデルを選択できるため、個人利用から企業システムへの組み込みまで幅広く対応可能です。
Llamaは、Meta社がオープンウェイトとして公開している大規模言語モデルであり、ライセンスの範囲内であれば商用利用も可能です。
企業が自社サービスに組み込んだり、独自のデータでファインチューニングを行って専門特化型のAIを開発することもできます。
AWS(Amazon Web Services)、Google Cloud、Microsoft Azureといった主要なクラウドサービスに対応しており、オンプレミス環境でも運用可能です。Hugging FaceなどのAI開発向けプラットフォームを通じても利用でき、柔軟にカスタマイズできる点が、開発者やスタートアップにとって大きなメリットとなっています。
Llamaは、大規模なクラウド環境がなくても利用できる点でも優れています。
軽量モデルでは、一般的なPCやエッジデバイスでのローカル動作も可能です。
ほかの高性能モデルがGPUを必要とするなか、Llamaは低スペックの環境でも動作可能なバリエーションが用意されており、モバイルアプリや組み込みシステムなどの開発にも適しています。
最新バージョンのLlama 4は、以下の12言語に対応しています。
残念ながら2025年7月現在ではLlama(ラマ)4の日本語対応は、公式にはサポートされていません。Meta AI(Meta社が開発した人工知能アシスタント)も、日本国内では利用できないのが現状です。
しかし、日本語環境でもLlamaを活用したいというニーズは高く、国内外の開発者や企業によって、日本語対応の独自モデルが開発・公開されています。
また、GitHubやHugging Faceなどでは、日本語対応済みのLlamaベースモデルが配布されており、エンジニアであれば簡単に試すことが可能です。
Llama(ラマ)の基本機能は、Meta社が提供するAIアシスタント「Meta AI」に組み込まれており、本来であれば対話形式でその性能を体験できるよう設計されています。
しかし、Meta AIは現在のところ日本国内では利用できないため、Llamaを使いたい場合は、ほかの手段を活用する必要があります。
ここでは、Llamaを日本国内で利用するための代表的な方法を3つ紹介します。
Hugging Faceは、AIモデルを簡単に共有・使用できる人気のプラットフォームです。
Hugging Face Hubでは、Llamaシリーズも公開されており、ダウンロード後は、PyTorchやTransformersライブラリを用いて、ローカル環境またはクラウド環境上でモデルを実行できます。
ただし、GPUやメモリなどの計算資源がある程度必要なため、エンジニアや開発者向けの手法と言えるでしょう。
「Google Colaboratory(Colab)」は、Googleが提供する無料のクラウドベース開発環境で、Pythonコードをブラウザ上で簡単に実行できます。
GPUも無償で使えるため、環境構築の手間なくLlamaを動かしてみたい方におすすめです。Hugging Faceのライブラリと組み合わせることで、LlamaモデルをColab上で簡単に試すことが可能です。
Llamaを内部で使用しているAIチャットサービスを使う方法もあります。
例えば、「Perplexity AI」は、GPT-4やLlamaなど複数の大規模言語モデルを駆使して開発されたAI検索エンジンです。
検索の代替手段として活用されるケースも増えているため、Llamaの処理能力を実感できるでしょう。
オープンウェイトで提供されているLlama(ラマ)は、非営利目的や研究目的であれば、無料で利用可能です。
商用利用についても、基本的には無料で使用できますが、月間アクティブユーザー(MAU)が7億人を超える企業に限っては、Meta社へのライセンス申請が必要となります。
ライセンスに関する具体的な料金体系は公開されていないため、大規模な商用利用を検討している企業はMeta社に直接問い合わせましょう。
Llamaの優れた自然言語処理能力は、業務効率化やユーザー体験の向上など、ビジネス用途に活用できます。
続いては、Llama(ラマ)の具体的な活用事例をいくつか紹介します。
Llamaを基盤としたチャットボットを導入することで、顧客からのよくある問い合わせに対し、スピーディーかつ的確に自動応答することが可能となります。これにより、カスタマーサポートにかかる人件費を削減できるだけでなく、24時間365日対応が可能になるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
具体例としては、オンライン会議ツールとして知られるZoomを提供するZoom社で、Llamaを含む複数の大規模言語モデル(LLM)を統合した業務支援AI「Zoom AIコンパニオン」を開発しました。
AIコンパニオンには、リアルタイムでの会議要約、チャット内容の整理、定型的な返信の自動化など、多くの便利機能が搭載されており、ユーザーの作業負担を大幅に軽減しています。
Llamaは、検索エンジンや社内ナレッジシステムの強化にも活用されています。
例えば、ソフトバンクが提供する検索サービス「Perplexity Pro」は、Llamaを含む複数の大規模言語モデルを組み合わせて実現されたAI回答型の検索エンジンです。ユーザーの質問に対し、関連する情報を文脈に応じて整理・要約して提示するため、従来のキーワード検索とは一線を画す利便性があります。
また、企業内に蓄積された文書やFAQなどをLlamaに学習させることで、従業員が自然な質問形式で必要な情報を迅速に引き出せるナレッジ検索ツールの開発も可能です。これにより、マニュアル確認や情報共有にかかる時間を短縮し、業務全体の生産性向上が期待できます。
Llama(ラマ)は、Meta社が開発したオープンウェイトの大規模言語モデル(LLM)で、自然な対話、文章生成、要約、分類など、幅広い自然言語処理タスクに対応しています。
特に、高い言語理解力と軽量なモデル構造による計算効率の高さが特徴で、クラウド環境だけでなくローカル環境やモバイル端末での実装も可能です。
現在ではカスタマーサポートの自動化やAI検索エンジンの構築、営業支援ツール、社内ナレッジの可視化など、さまざまな業種・業務分野でLlamaの導入が進んでいます。
また、企業ごとのニーズに合わせたカスタマイズや自社データでの学習(ファインチューニング)も可能であり、柔軟性の高いAI活用が実現します。
Llamaをはじめとする生成AIをビジネスに導入することは、単なる作業の自動化にとどまらず、業務効率の改善、顧客体験の向上、そして新たな付加価値の創出につながります。
競争力ある企業づくりに、ぜひAIを活用してみてはいかがでしょうか。