インタビュー/コラム|Septeni Focus [セプテーニ フォーカス]

DEI×縦型ショートドラマの可能性 〜セプテーニが実現する社会課題に対する新たなアプローチ〜

作成者: Septeni FOCUS 編集部|2026.2.10

企業が社会課題にどのように向き合い、どのようなアクションを取っていくのか、そしてそれをいかに発信していくかは、重要な課題です。

コンプライアンス、情報セキュリティ、ハラスメント防止、働き方改革、そしてDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)など、企業が様々な課題に関する情報を発信するなかで、受けて一人ひとりに「自分ごと」として捉えてもらうのは容易ではありません。

そんななか、セプテーニグループは、DEI推進の一環として「アンコンシャス・バイアス(※)」をテーマとした縦型ショートドラマコンテンツを3本制作しました。そして、社内向け限定公開の段階で合計900回以上の再生数を記録。過去の施策と比べて、格段に多くの社員にリーチすることに成功しました。

本記事では、DEI推進の手段としてショートドラマが有効だった理由から、その制作プロセス、そして今後の企業コミュニケーションへの展開可能性まで、Septeni Japan株式会社 ショート動画開発部(SSS)の合谷木麗奈氏に話を伺いました。  

◆資料作成篇

◆会議篇

◆ランチ篇

※アンコンシャス・バイアス
過去の経験や社会的な価値観などに基づいて、無意識のうちに認知や判断に生じる偏りのこと。誰もが持っており、気づかないまま判断・行動すると、相手の可能性を狭めたり傷つけたりする恐れがあるとされています。

DEI推進の手段に「ショートドラマ」が有効だった理由

―まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。

合谷木氏:Septeni Japan株式会社の合谷木麗奈です。2025年からショート動画開発部に参画し、縦型動画を中心に企画・制作を行っています。以前は媒体社担当として、主要プラットフォームの広告拡販、プランニングに従事していました。現在は、プラットフォームの特性を活かしたコンテンツ制作に日々取り組んでいます。

 

―今回の取り組みが始まった背景を教えてください。
合谷木氏:セプテーニグループでは年に1回、グループ内のDEI推進担当者が中心となって「ダイバーシティ月間」を開催しています。過去のダイバーシティ月間では、映画上映やトークイベントなどさまざまな取り組みが行われてきましたが、時間的制約によって参加率がなかなか上がらなかったり、参加者が固定化してしまう、といったことが課題になっていると伺いました。

そんななか、今年は「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」というテーマに着目し、新しいDEI推進の方法として「ショートドラマを活用した取り組みができないか」

と、ショート動画開発部へご相談いただきました。

 

―なぜDEI推進の手段として「ショートドラマ」が有効だったと考えていますか?
合谷木氏:ショートドラマの最大の特徴は、気軽かつ短時間で視聴できることです。ご相談いただいた際は、短い時間でどこまでテーマを深掘りできるか懸念もありましたが、ショートドラマという形式を生かして、今までは届けられなかった層にも見てもらえる可能性がありそうと、プロジェクトチーム一同で感じていました。

コンテンツ制作時には、「教育ビデオ」のような堅苦しさをなるべく排除し、「ちょっとした時間に流し見できるコンテンツ」と見えることを目指しました。

まずはショートドラマとして興味を持ってもらい、ドラマを視聴後に『悪気はないけど』というタイトルの意味、つまり「アンコンシャス・バイアス」というテーマに気づいてもらう。この流れを通して、DEIに対する関心があまり高くない層にもアプローチできたのではないかと考えています。

広告制作で培ったノウハウを社内啓発に応用する

― 一般的なショートドラマとの制作方法の違いについて教えてください。


合谷木氏:普段の業務では、「この商品・サービスは生活者に何を提案できるか」と考えることが多いです。しかし今回のプロジェクトでは、1つの正解を提案するのではなく、あくまで「考えるきっかけ」を作ることが目的でした。

アンコンシャス・バイアスという目に見えない偏見を可視化し、視聴者に「自分の行動はどうだろう?」と振り返ってもらう。この設計部分が、最も大きく違った点だと考えています。

 

―逆に、普段の制作業務と共通している点はありますか?
合谷木氏:普段のコンテンツ制作によって得た知見は随所に活きていますが、なかでも「飽きさせない画作り」へのこだわりは、今回も共通しています。

視聴のハードルが低い分、ショート動画はすぐに離脱されてしまう可能性もはらんでいます。そのため、映像の展開には細心の注意を払いました。場面を伝えるカット、肩越しに会話の向こう側が見えるカット、一人称視点のカット。これらを効果的に組み合わせることで、わずか1分の中でも視聴者を引き込む構成を実現しています。

また今回はあえて、全篇スマホで撮影することで、視聴者により身近でリアルな疑似体験を提供できたと考えています。

事例:アンコンシャス・バイアスをテーマにしたショートドラマ

―実際に制作されたショートドラマについて教えてください。

合谷木氏:3本のショートドラマを制作し、それぞれ異なる場面でのアンコンシャス・バイアスを描写しました。「資料作成篇」では性別と職業、「会議篇」では海外出身者とのコミュニケーション、「ランチ篇」では飲食シーンに焦点を当て、アンコンシャス・バイアスを可視化しています。

どのエピソードも、職場や日常生活で起こりうるシチュエーションを選定しています。視聴者が「自分もやってしまっているかも」と感じるような、身近な題材にこだわりました。

 

―テーマを扱ううえで、どのような工夫をされたのでしょうか?
合谷木氏:アンコンシャス・バイアスというテーマを通して、今回描きたかったのが「本人が気づいていない無意識の言動」です。それをどうやって可視化するか、それが今回の制作における最大の課題であり、工夫した点でした。

制作の過程では、セプテーニグループ社員へのアンケートを実施し、皆さんが普段どんなことでモヤっとしたり、違和感を抱えたりしているのか調査しました。アンケート結果は、発想の起点として大変参考になりましたが、一方でその内容が「すでに認識できている偏見」だったため、「無意識の偏見」を描くうえでは悩みながらドラマの構成を考えました。

検討を重ねて、今回のショートドラマでは、相手の反応や空気によって「自分のアンコンシャス・バイアス」に気づいていく構成としました。そうしたことで、ドラマを見た人が、自分自身の言動を振り返るよう促す仕掛けにできたのではと考えています。

またランチ篇では、他人の言動には気づけるのに、自分自身の言動となると気づきにくいという場面も描写しました。


―その他、制作において注意された点はありますか。
合谷木氏:企画に制作者本人が気づいていない思い込みや偏見が潜んでいる可能性を考え、電通グループのDEI推進を含む人権啓発の専門家である安藤勉さんに監修をご依頼しました。会議篇では、当初「彼女は〇〇出身なんですよね」という出身地の話を冒頭に入れていましたが、「会議においては、出身などの属性に言及する前に、役割や業務について触れる方が自然なのではないか」というご意見をいただきました。

これにより、より多角的な視点を取り入れ、かつ日常会話としても自然な構成へと磨き上げることができました。


―ドラマ公開後の反響はいかがでしたか?
合谷木氏:社内の反響は想定以上でした。社内向け限定公開の形式で、3本の動画で合計900回を超える再生数を記録し、過去のイベント参加者数と比較しても格段に多くの社員にリーチすることができました。

また、社内向けに視聴後アンケートも実施しました。特に印象的だったのは、「どれも自分がやってしまいそうだと思った」というコメントです。また、業務中のちょっとしたやり取りや、ミーティングでの発言のなかでも、「これってアンコンシャス・バイアスかな?」という言葉が自然に使われる様子が見られるようになりました。

ショートドラマという親しみやすいフォーマットだからこそ、「DEI」という言葉にあまりピンと来ていなかった方も、気軽に視聴してくれたのでしょう。従来のセミナーや研修には参加していなかった層にもメッセージが届き、組織全体でDEIへの意識が高まったと実感しています。

ショートドラマが拓く、企業コミュニケーションの新たな可能性

―今回の取り組みから、どのような可能性が見えてきましたか?
合谷木氏:社内向けの課題として、啓発コンテンツをどのように企画・発信するべきか困っている企業は、一定数いらっしゃると思います。また社外向けで言うと、社会課題に対して向き合うスタンスを持ち、実際にアクションを取っていても、それをどう対外的に発信するか悩まれているブランドも多いのではと感じています。

ショートドラマは、日々を忙しく生きる人々に、普段は関係ないと思っているテーマに対しても、触れるきっかけを作りやすいフォーマットです。その特性を活かして、今後さらにショートドラマ・ショート動画の活用範囲が広がっていくことを期待しています。


―最後に、今後の展望についてお聞かせください。


合谷木氏:今回制作したショートドラマは、社内向けで終わらせるのではなく、外部公開をし、多くの企業にお役立ていただけるようにしました。この外部公開のアクションまで含めて、結果的に社内・社外のDEI推進につながればと考えています。

 

そして、今後もショートドラマ・ショート動画を通じて、社会課題にまつわるコミュニケーション上の課題を解決していくことにチャレンジしたいです。例えば採用、社内啓発、サステナビリティ活動の発信など、多岐にわたる領域において、コンテンツ制作を通じて貢献できるのではないかと考えています。

 

ケアすべきところに目を向けながら、これからも課題に対し最適なご提案をしていきます。